はじめに
北里大学医学部の指定校推薦では、集団面接で医療倫理・時事テーマについてのグループディスカッションが行われます。また、小論文でも医療倫理に関連するテーマが出題されることがあります。
この記事では、出題されやすい6つのテーマについて、どのような方向性で考えるべきかを解説します。具体的な回答例は面接対策資料(無料相談で配布中)に記載していますが、ここではテーマごとの考え方のフレームワークを紹介します。
大前提:医療倫理の4原則
どのテーマにも共通する土台として、ビーチャムとチルドレスの医療倫理の4原則を理解しておきましょう。
| 原則 | 意味 |
|---|---|
| 自律性の尊重 | 患者さんの意思を尊重する |
| 無危害 | 患者さんに害を与えない |
| 善行 | 患者さんに善い行いをする |
| 正義 | 限りある医療資源を公正に分配する |
この4原則に基づいて自分の意見を組み立てると、論理的で医師としての視点を持った回答になります。
テーマ1: 安楽死と尊厳死
- 安楽死(積極的安楽死)は日本では法律で認められていない
- 尊厳死(消極的安楽死)は認められている
- 尊厳死とは、心肺蘇生法などを行わず、緩和ケアなどで患者さんが尊厳を保ったまま最期を迎えること
医療倫理に基づくと、安楽死を認めるべきとは言えません。ただし、単にダメだで終わるのではなく、患者さんに寄り添う、緩和ケアでQOLを守る、カウンセラーやケアマネージャーとチームを組んで心のケアを行うといった建設的な代替案まで述べられると高評価です。
テーマ2: チーム医療
最重要ポイントは、チーム医療の中心は医師ではなく患者さんであることです。これを間違える受験生が非常に多いです。
医師はチームの中で全体の意見をまとめ、舵を取る役割を担います。チームのメンバーとしては、看護師、PT、ST、OT、管理栄養士、カウンセラー、ケアマネージャーなどが含まれます。
北里大学はチーム医療を特に重視しているため、このテーマは出題可能性が非常に高いです。
テーマ3: 日本の医療保険制度と医療費問題
キーワードは国民皆保険です。日本の医療保険制度の強みは、全国民が原則3割負担で医療を受けられること。しかし、医療費の圧迫が深刻な問題になっています。
医療費を削減するにはどうすべきかと聞かれた場合、最も適切な回答は予防医学の促進です。予防医学により急性期の患者数が減り、救急車の出動回数も減り、全体的な医療費の削減につながります。
救急車の不必要な利用を減らす、所得で負担額を変える、といった回答は、医療費全体への影響が限定的なので強い回答になりにくいです。
テーマ4: 臓器移植と新臓器移植法
- 2009年改正で脳死を人の死と定義
- 本人の書面がなくても家族の同意のみで臓器提供が可能に
- 年齢制限の撤廃(15歳未満からも可能に)
- 親族への優先提供を認める
議論すべき問題点として、家族の同意のみで臓器提供が行える点(本人の意思確認の重要性、Living Willとの関連)や、年齢制限撤廃による子供の臓器の商品化リスクがあります。
オプトイン方式(本人の明示的同意が必要)とオプトアウト方式(拒否の意思がなければ提供可能)の違いも理解しておくと良いでしょう。
テーマ5: ゲノム編集・CRISPR-Cas9
CRISPR-Cas9は2020年にノーベル賞を受賞した技術で、多くの大学で出題実績があります。
- デザイナーベビー(生まれる前の遺伝子改変)については現時点ではすべきではないが無難
- ただし新しい技術を全否定するのも良くない
- 生まれた後の人に対する遺伝子治療や、iPS細胞と組み合わせた応用については肯定的に語れると良い
- 目的の遺伝子が予期しない役割を持っている可能性(オフターゲット効果)にも触れる
テーマ6: 出生前診断
- 出生前診断が優生思想・多様性の排除につながるリスクを指摘する
- 多様性の排除はあってはならないという立場を明確にする
- NIPTで流産リスクなしの検査が可能になり、年齢制限も撤廃されつつある現状を踏まえる
- 医師の役割として、メリット・デメリットを患者に適切に伝え、カウンセラーを紹介してメンタルケアを行うことが重要
まとめ
医療倫理のテーマは正解があるわけではありませんが、方向性を間違えると致命的なテーマが多いです。この記事で紹介した方向性を理解したうえで、自分の言葉で語れるように練習しましょう。
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